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判例詳細

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住吉川景観訴訟

(1)住吉川

阪神間は、六甲山系と大阪湾に挟まれた狭い傾斜地が続き、六甲山を源とする湊川、 生田川、都賀川、石屋川、住吉川、芦屋川、夙川というほぼ一直線で大阪湾へ流れ込む 短い河川が多数有ります。これらは大雨ごとに氾濫を繰り返し、土砂を堆積させ、松な どの植栽を作りだしました。とりわけ開発が進み住宅地にのこされた自然景観ゾーンで ある住吉川や芦屋川の河川を軸とした景観は美しく絵画や小説の素材になってきまし  た。
住吉川畔のあり小説家谷崎潤一郎が暮らした屋敷は、「倚松庵」と称せられ、小説「細 雪」の主人公の居宅のモデルとなっています。

(2)神戸市の六甲アイランド埋立地へのアクセス計画

 神戸市は、六甲アイランド埋立により造成された新市域へのアクセスとして六甲ライナーという新交通システムをJR住吉駅から六甲アイランドへ敷設する計画を立てました。その路線は、陸上部では、住吉川畔に橋脚を立て、六甲ライナーを通すというものでした。

(3)景観の破壊

 その計画は、地域住民には、①比類なく美しい住吉川の河川軸景観を破壊するものである。②六甲ライナーは住民の住居を見下ろし住民のプライバシーを著しく損なう。③六甲ライナーの橋脚のため「倚松庵」等文化財級の構造物が失われる。④河川敷という脆弱な地盤に橋脚を設置するのは地震災害に耐えられない恐れがある。という様々な危惧があり容認できないものでした。

(4)神戸市の計画強行と裁判

 神戸市は、住民の危惧を一蹴し、計画を強行しました。やむなく住民側は、工事の資金の実行を違法支出であるとして六甲ライナー敷設計画を争いました。計画自体を争うだけでは、計画の中味に入れず、門前払いされる可能性があるからです。  訴訟では、生越教授が計画敷地の脆弱性を指摘し、計画の危険性を明らかにし、住民は景観の希少性(六甲山から立体的に現場へ続く河川と植栽のバランスの美しさ)を主張しました。
 これに対して神戸市側は、生越教授の指摘を露骨に鼻で笑い、六甲ライナーの窓のガラスは半透明で眼下の住宅を見下ろす事はない等を主張しました。
 訴訟の過程で、神戸市は「倚松庵」を神戸市が取得した住吉川畔に移設し、建物は保全されました。しかし裁判所は住民の指摘をまともに受け止めず、住民の訴えは認められませんでした。

(5)兵庫県南部地震

 1995年1月17日早朝の兵庫県南部地震により、「倚松庵」は損壊を免れましたが、六甲ライナーの橋脚が倒壊しました。早朝であり、まだ運行前だったので大惨事は免れましたが、生越教授の証言通りの事態になりました。
 既成事実にばかり目を奪われている裁判所と住民の声を無視圧殺する神戸市の先見性の欠如を露呈しましたが、いずれからも反省の声が聞かれません。住民が自らの命、健康、財産を守るためには、不断の努力が必要であることを示した事件でした。
文責:髙橋 敬

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