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判例詳細

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江井ヶ島酒造事件ー安易なサイドビジネス

江井ヶ島地域

 明石市の中心から西の江井ヶ島漁港は、大仏建立に係わった行基が開いた湊と言われる由緒のあるものと言われている。また江井ヶ島は西の灘と称される酒造地帯であると言われている。  すなわちこの地域は近世の伝統的な工業地域であったのである。

江井ヶ島酒造

 インターネットの情報によれば、「この酒造会社は、清酒『神鷹』の醸造元であり、その一方で『ホワイトオークウイスキー』や『シャルマンブランデー』などといった洋酒も製造しており、日本酒メーカーの中では比較的柔軟な思考を持った企業でもある。」とされている。

ウナギ養殖

 江井ヶ島酒造は、清酒の売れ行きが思わしくないのか、瓦製造会社の敷地と接している工場に多数の水槽を作り、ウナギの養殖を開始した。水槽の水はウナギが窒息しないようたえず水の供給と循環をさせなければならない。

瓦製造工場

 江井ヶ島には、日本瓦の製造工場が多数立地し、明石瓦を製造していた。瓦製造は、瓦の形を作り、それを乾燥させて、地中に掘り下げた炉で焼いて完成させるものである。  ところが江井ヶ島酒造がウナギ養殖の水槽をもうけてから、炉で瓦が焼き上がるのに、これまでの焼却時間より長く焼かないと瓦が出来なくなって瓦工場の経営者は不審に思っていた。そして、その後瓦を焼く炉(地中にある)に水が溜まるようになり、さらに型の乾燥場の床もじめじめし、水分が浮き出すようになって、その異変が江井ヶ島酒造の操業の為ではないかという思いが募ってきた。

操業停止

 瓦製造工場は、もはや瓦製造は経費の面からも困難になった。そこで江井ヶ島酒造に対して相互の工場の境界付近も日常的に湿っているので、江井ヶ島酒造の酒造製造過程で水が瓦工場へ浸透しているのではないかと追求したが、江井ヶ島酒造からは、雨のせいだとして一蹴された。  江井ヶ島酒造が、何らの対処をしないので瓦製造工場は操業をやめざるを得なかった。

訴訟

 瓦工場の経営者は、やむなく弁護士に依頼して江井ヶ島酒造の責任を追及する事になった。そのうち瓦工場の隣接工場は、ウナギ養殖の水槽だという事実もわかった。そして江井ヶ島酒造もウナギの養殖をやめた。  訴訟では、江井ヶ島酒造は、ウナギ養殖をやめても瓦工場の湿った状況が抜けないのは雨や瓦工場の排水設備の不備であり、江井ヶ島酒造のウナギ養殖のせいではないと争った。 しかし瓦工場の代理人が江井ヶ島酒造がウナギ養殖をやめた後の水槽を見分したところ、水槽にはクラックが多く、かつコンクリートの水槽に防水措置が全くとられていないことを確認したので、ウナギ養殖の水槽とそこから浸透した水が瓦工場へしみ込んだこと、一旦しみ込んだ水は特別の措置をとらない限り除去出来ないと追求した。  裁判所も、江井ヶ島酒造のウナギ養殖の水槽の漏水と瓦工場への水の浸透の関係を認め損害賠償を認めた。

結論

 江井ヶ島酒造の場当たりのウナギ養殖は、防水措置とか漏水対策、水の隣地への浸透防止工事を怠る極めて杜撰で、思いつきのサイドビジネスの実行だった。そのため何十年も営々業務を行い、行政から瓦を焼く作業の公害対策を迫られ、公害防止措置にも設備投資をしてきた瓦製造工場が閉鎖に追い込まれた。  調査や近隣への対策を怠る安易なサイドビジネスの追求は、「柔軟な思考」として褒められるものではなく、弱いものいじめという結果をもたらしたのである。

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