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明石花火大会歩道橋事件

改正検察審査会法施行~明石花火大会歩道橋事件

 本年5月21日により「裁判員」制度が開始いたしました。それと同時に「改正検察審査会法」が施行されました。
 検察審査会は検察官が不起訴処分(刑事事件について裁判にかけないとする判断)とした場合に、その判断の相当性を11人の市民代表が審査をして、不起訴処分が不当な場合には「起訴相当」「不起訴不当」の判断をして検察官に処分の再考を求める制度です。
 つまり、わが国には既に刑事司法への市民参加制度が存在していたのですが、この検察審査会の議決には拘束力は無く、検察審査会が「起訴相当」「不起訴不当」との議決をしたとしても検察官はこれに従って起訴をする義務はありませんでした。
 2001年7月21日に兵庫県明石市の市民夏まつりの花火大会会場において朝霧歩道橋上で発生した「群衆なだれ」事故は、死者11名・負傷者200名以上という大惨事となりました。この事故は、明石警察署・明石市・警備会社による、ずさんな雑踏警備計画が原因で発生したものであり、民事事件においては三者に対する損害賠償責任が認められています。
 他方、刑事事件では、神戸地検は、雑踏警備を担当していた明石署の現場警察官ら5名を業務上過失致死傷罪で起訴したものの、雑踏警備本部長・副本部長であった明石署署長・副署長については不起訴処分としました。
 遺族らは、事故当日における現場担当者の責任だけを問う神戸地検の起訴方針を疑問とし、2度にわたり神戸検察審査会に審査請求をしました。そして神戸検察審査会は異例とも言うべき2度にわたる「起訴相当」という議決をしましたが、神戸地検はこの議決に従わず3度目の不起訴処分をし現在に至っていました。
 雑踏警備は「計画8割・当日2割」と言われ、周到な雑踏警備計画の立案とその周知こそが重要です。当日如何に現場担当者が努力しても、事前の準備がなければ圧倒的多数の大群衆を整理・誘導することはできません。
 そしてその雑踏警備計画の立案に最高責任者として関与し、事故当日も明石署において無線やモニターカメラーを駆使して現場の全体を把握することができた明石署長・副署長の責任が問われなければ、この痛ましい事故の原因は解明されないし、再発防止にもつながりません。神戸地検の誤った起訴方針は、雑踏警備は当時に現場担当者がきちんとすれば足りるのだという誤った理解を構成に残すものであり、そのまま放置することはどうしても許されません。
 また、現場担当者の責任をめぐる刑事事件判決においても、本当の責任者は明石署長・副署長であり、これらの者が起訴されないことは正義に反するとの異例の指摘もなされています。万が一無罪となるとしても、それは検察官が密室で恣意的に決めるのではなく、公開の法廷で審理された上で裁判所による判断がなされることにより、はじめて事故の原因究明や再発防止につながるとと言えます。
 改正検察審査会法は、検察審査会の起訴相当の議決について拘束力を認め、二度目の起訴相当の議決がなされれば、検察官に代わり裁判所が選任する弁護士が起訴をするという「起訴強制制度」を導入しました。仮に神戸地検が不起訴処分をしても、神戸検察審査会において市民代表が起訴相当を議決することで起訴がなされるのです。遺族は市民の良識が神戸地検の歪んだ判断を正し、公開の法廷で審理がなされることを願って、この改正法の施行日である平成21年5月21日に3度目の審査請求を神戸検察審査会に申し立てました。
 裁判員制度において刑事裁判への市民参加がうたわれていますが、捜査段階での警察・検察の捜査や起訴方針が歪んでいれば、市民の良識を刑事裁判に反映させることにはなりません。検察審査会が三度事故原因の究明と再発防止につながる判断を示すことを弁護団の一員として強く期待しています。
(辰巳 裕規)

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