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判例詳細

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明石花火大会歩道橋事件 ~ その2 ~

改正検察審査会法のもとでの1回目の「起訴相当議決」

 神戸第二検察審査会は7月29日付けで起訴相当の議決をした。起訴強制制度を持つ改正検察審査会法のもとでの「起訴相当」の議決である。神戸地検は旧法下での検察審査会の2度にわたる起訴相当の議決を踏みにじり,3回も不起訴処分にした。現場担当者の事故当日の過失さえ問えばよい,という雑踏事故の本質に背いた起訴方針に固執したためである。
大群衆を制御する雑踏警備は,計画段階が重要であり,周到な雑踏警備計画の策定と周知徹底があり,初めてイベント当日の警備が機能する。出たとこ勝負であったがために本件の悲惨な事故は発生した。事故当日の現場担当者の過失しか問わない神戸地検の起訴方針を検察審査会の良識ある市民代表は厳しく非難をした。
また議決では公訴時効の停止を定めた刑訴法254条2項と「過失の共犯」というこれまで判例も学説も存しない分野ですばらしい法律解釈を行っている。過失の競合事案において,刑訴法254条2項の適用があるか否かは,もちろん今後議論があろう。しかし,それを決めるのは裁判所であって,検察庁ではない。議決書では,検察官が公訴時効が成立している旨を主張したとの記載がある。これが事実であれば,検察官として誠に恥ずべき主張である。訴追側は公訴時効の成立を否定し,あくまで公訴を追求すべき立場にあるし,その職責を負う。自らの誤った起訴方針のもと,被疑者を不起訴とし「公訴時効になりました」などと言う立場にはない。公開の法廷で正々堂々と共犯関係の有無を立証し,刑訴法254条2項の解釈について論陣を張り,潔く司法判断を受ければよいのである。特に判例も学説も存しない分野なのであるから,検察庁が自らの職責を狭める偏狭な法律解釈をとるべきではない。もし,本当に検察官が公訴時効が成立している旨を主張したのであれば,その検察官はその職を辞すべきである。検察官の法律解釈よりも,市民代表11名の法律解釈の方が優れている。
今後,神戸地検は3か月以内に再捜査をし,4度目の判断を迫られる。不起訴となったとしても,検察審査会は二度目の審理に自動的に入り,二度目の起訴相当議決が出れば起訴強制となる。神戸地検は,そろそろ過去の起訴方針の誤りを素直に認め,遺族に謝罪した上で,すみやかに起訴をし公開の法廷での審理に臨むべきである。遺族が望むのは,事故原因解明作業が公開の場で吟味されることである。不起訴処分は,大規模事故の原因究明に繋がる貴重な事実解明資料を検察庁のロッカーで腐らせることと同義である。その上で,裁判所が有罪・無罪あるいは時効の成否を判断するのである。検察庁が密室で独断で判断すべきではないのである。

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